名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

本日の名台詞

僕は、駆ける。太宰治作『走れメロス』、その主人公メロスのように持てる力の全てを出し切り、走る、走る。友ではなく、ボロボロになった制服のためというのが哀しくてならない。
風を切る肩が寒い。裸だからだ。心が寒い。裸だからだ。懐が寒い。仕送りが少ないせいだ。僕の股間のモノが左右に揺れている。トランクスだからだ。ブリーフは嫌いだからだ。間違っても純白ブリーフ砂漠仕様への再染色技術継承者にはなりたくなかったからだ。
僕は、駆ける。走ることしか知らない、走ることだけが人生の全てであると猛進するマラソンランナーのように走る、走る。
走り出してすぐに感じた足の重さや呼吸の苦しさがなくなっていく。ランナーズハイだ。顔がにやけてくる、テンションが天井知らずに上がっていく。エンドルフィンの過剰分泌による陶酔状態だ。ドラッグ大好きな連中はどうかしている。ただ走ればこんなにいい気分になれるのに、お金と人生を無駄にしてなんと愚かなことか。自分は愚か家族まで不幸になる。僕は比較的不幸、ということは親父は中毒者なのか? あながち否定できないが……なんだか意識が遠のいていく気がする。もうすぐ神の領域に踏み込むからだ。体が軽い、ふわふわとしてくる。僕は神に等しき存在となるからだ。
なぜ駆けるのか。そこに道があるからだ、走るのをやめる時、即ち僕が死ぬ時だ、何故なら僕は神に等しき存在であるとともに史上最高のアス……いや、違う。制服だ、制服を救うために走っているのだ。


タイトル:ベン・トー ― サバの味噌煮290円(小説:スーパーダッシュ文庫)
作者  :あさうら:アサウラ
絵師  :柴乃櫂人
デザイン:?
編集  :?
キャラ :佐藤洋 (176 P)



 ▼本日の作品&台詞解説▼

半額弁当争奪戦。しかしそんなことのために人は何故ここまで熱くなれるのか!
バカ小説の極みなんですが、文章の疾走感が半端ではなくそれだけで読む価値あります。
バカ小説としては、2008年のライトノベルバカ小説部門はほぼ制したも同然?

それでは台詞解説ですが……
今日はあえて半額弁当争奪という本編からはそれは部分を引用してみました。すったもんだの末すっぱになり、自分の制服が燃やされる!という事態になって必死で確保に走っている図。万事こんな感じです。