名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

本日の名台詞

「そうするしかなかったよ」


タイトル:扉の外(小説:電撃文庫)
作者  :どばししんじろう:土橋真二郎
絵師  :白身魚
デザイン:?
編集  :?
キャラ :正樹愛美 (239 P)



 ▼本日の作品&台詞解説▼

いつもと順番が逆ですが、最初に台詞解説を済ませちゃいますね。
ものすごく重大な影響を与える物事を成し遂げても、さらりとこの一言で済ませてしまえる人物というのはかなりおそろしいです。台詞に重みがないだけにかえって怖いという……。

では、作品について、
閉鎖空間での「ゲーム」を扱った作品。実はけっこう好き。
非常に癖が強く、電撃文庫「扉の外」の評価が両極端といった記事が作られてしまうくらい人によって評価の割れる作品です。現在、電撃の公式サイトで第13回電撃大賞入賞作品選評が掲載され、扉の外の選評もあるのですが、応募時とは書き直しなどが入って内容も変化しているとは言え、本質的な部分は一緒でしょうから参考になる部分もあるかと。

普段は意識して詳しく感想とか書かないようにしてますが、ちょっとこの作品には刺激を受けたので突っ込んだ話をしてみます。読んだ人向けなので、ネタバレ避けたい人は以下は読まないでください。

まず、主人公の青臭さは特筆もの。典型的な「嫌なことから逃げている」少年なのですが、、作中でも流されてばかりであまり成長してません。妙に登場する女の子にもててますが、読んでて半ば最初の刷り込みによる恋愛感情みたいなもので、少年自身の魅力で惹きつけたように思えなかったのは残念です。主人公に感情移入して読むタイプの読書スタイルだと、これはちょっとばかし厳しい作品かもしれません。

それから女神様たる少女三人。
愛美は、描写次第ではかなりおもしろくなりそうな性格ですが、つっこんだ描写が足りないので、見てて居心地の悪い優等生で印象が止まってしまいます。うーん、実に惜しい! 細かい表情の動きとか書いてもらえるといろいろ想像できてよかったんですが。
委員長と、幼馴染みはよい屈折キャラでした。実に素晴らしい具合にねじ曲がってます。

クラス同士の抗争?が、直接サバイバルではなく、SLGとして動いていくのはかなり興味深い設定でした。

ただ、清々しいまでに投げっぱなしで全く回収されない設定というのは投稿時からこうなのか、それとも続編を意識してこう変化したのかは気になるところです。
「俺たちの戦いはこれからだ!」とか最後に書かれてあっても全く違和感ないですよねこれ(笑) ……ていうかあの終わり方ってそのものかしら(汗

全体としてみると、荒さ・歪さが目立ち作品として未完成な印象が強いですが、将来的に大化けする可能性を秘めていると思ってます。今後しばらく要チェックですね。次の作品が楽しみ。