楽園ヴァイオリン クラシックノート
作者 :ともぎりなつ:友桐夏
絵師 :四位広猫
デザイン:?
編集 :?
個人的には心待ちにしていた友桐夏作品の新刊。今回もその期待に違わずやってくれました。
実にすばらしいリリカル・ミステリですっ!!
リリカル・ミステリってなに?と聞かれるとなかなか回答に困るんですが、あえていうならば友桐夏作品の作風そのものがリリカルミステリであると言ってもいいでしょう。体裁そのものはシリアス主体の少女小説定番な学園もの……のはずなのに、ふと気が付くと全く違う空気に支配されているという……。この人の作品はネタバレしてしまうとおもしろさが下がる気がするので、できればネタバレなしで読んでください。以下は軽くバレありで。
突出した能力を持ったものしか入ることが出来ないという塾。その塾に、既にヴァイオリニストとして世間では高い評価を得ていた少女・盟は、音楽枠の特待生として入塾試験を受け見事合格を果たす。その塾の中では裏口入学した生徒がいるとの噂が広がっていて、盟は一緒に音楽枠で入塾したもう一人の少女・巴のことを疑うが……。
とにかくですね、一瞬前まで普通の女子高生っぽい会話をしていたはずが、気がつくと「こ、これはどこの権力闘争ですか!?」というお互いの身を斬り合うような緊張感漂う会話になっているのが特徴です。あんなに清らかだと思っていたあの子が実は……な、なんてこったあぁぁぁぁ……だがそれがいいわけで。
また作者の他の既刊は、いずれも少しずつ物語上の接点があり、他を知らなくても楽しめますが知っているとより楽しめる仕様になっていますので、もしこの作品を最初に手にとって気に入ったのであれば、ぜひ他の友桐夏作品にも手を出してみてください。
この作品の名台詞
「多数決なんて一般人のすることよ?」
「盟さんほどのひとが何を言うのよ。天才は我が道をいってこその天才でしょう。だいたい何かに依存する自信なんて本物の自信とは言えないわ。他人の意見や過去の実績や所有物の価値や家柄や何かに甘んじているだけ。それは自信じゃなくて依存というのよ。根拠のない自信こそが、本物の自信よ。盟さんはアマティがなくても弾けるわ」
「ひとは変わろうとするとき、まずこれまでの自分を否定するのよ。そしてこれまでの自分というものをつくり上げてくれた、周囲の他人を否定するの。そしてその古い人間関係を断ち切るところから、自己改革を始めていくのよ。つまり人間関係が浅ければ浅いほど――友達の数が少なければ少ないほど、変わるのは簡単なのよ。重力のように引きとめようとする力が少ないわけだから、少し地面を蹴るだけで大きく弾める。いくらでも変われる。いくらでも冒険できるわ。でも、あたしは誰にも変わってほしくないのよ。あたしはもう何一つ失いたくないの。誰にも切り捨てられたくないのよ。あたしはね、あたしの周囲にあるすべてのものを地上に引き止めておくための強い重力になりたいと思うわ」
――さあ、盟。あたしに教えて。
――どちらが、多数派?
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特別な才能を持つ者だけが入ることの出来る一種の塾を舞台にした話。サブタイトルが、「クラシックノート」となっているが、『白い花の舞い散る時間』、『盤上の四重奏』と同じ世...
「盟さん」 「ご用心。そうやって侮っていると、今に足元をすくわれちゃうから」 「――誰に?」 「この塾に」 『白い花の舞い散る時間』等の友桐夏の最新作。今回もリリカル・ミス...
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