名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

しずるさんと無言の姫君たち―The Silent Princess In The Unprincipled Tales

タイトル:しずるさんと無言の姫君たち―The Silent Princess In The Unprincipled Tales(小説:富士見ミステリー文庫)
作者  :かどのこうへい:上遠野浩平
絵師  :くらもとかや:椋本夏夜
デザイン:?
編集  :?

安楽椅子探偵ならぬベッドの上の名探偵のしずるさんと、親友にして助手役のよーちゃんによる猟奇殺人ミステリ。うーん、やっぱりおもしろい。ゆったりしたペースでしか出ないのが残念ですが、これくらいがちょうどいいのかも。
逆にまだ3巻しか出てませんので、新規に手を出しやすいとも言えます。一応他の上遠野ワールドとも世界の繋がりを認識させる描写はありますが、それを知らなくても問題なく読める作りになってます。イラスト含めていい出来ですよー。

この作品は基本的に徹底して病室でのしずるさんとよーちゃんの会話で話が進むのが特徴かな。よーちゃんによっていろんな状況説明はあるけれど、しずるさんはもちろんのこと、よーちゃんも現場に行く事はまずありません。そのために扱っているのは猟奇殺人なのに、不思議とどこか醒めた雰囲気があってそこがまたいいのです。
あと、今まであまり意識した事がなかったんですが……よーちゃんて実は相当な秀才なんだということが今さらながら分かってきました。半ば天才の域に達しつつあるかも。そうだよなあ、しずるさんの知識レベルについていくのってすごいんだよなあ。


この作品の名台詞

「それを決めるのは、私じゃないのよ、きっと」
「え?」
「私の前にいる、私が生きている意味が、そのことを決めてくれると思うの、きっとね」

→解説


「よーちゃんは、”可哀想”ってことを、どう思う?」
「どう、って――」
「誰かが誰かを可哀想だと思う――それは確かに優しい事だけど、でも時と場合によっては何の意味もないものだったりすることがある――とは思わない?」
「え、えと――」
「人間にとって一番素晴らしいことは感情移入だ、なんて馬鹿なことを言ってた作家がいたけど――同情なんて、状況が違えば何の役にも立たないわ。人は見当外れの感情移入ばかりして、余所に害にしかならない介入を繰り返しているだけよ。ねえ、よーちゃん――あなたは優しいわ。でもその優しさの使い道を間違えないで。
可哀想なのは、みんながそうなのよ。誰かだけが特に可哀想ということはない……何かを救おうとすれば、別のものを犠牲にするしかないのが、世界というものよ。そして私なら、よーちゃん――あなた以外の誰かを、あなたを犠牲にしてまで救おうとは思わない」

→解説


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