名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

モンスターズ・イン・パラダイス 2

タイトル:モンスターズ・イン・パラダイス 2(小説:ウィングス文庫)
作者  :しまだりり:縞田理理
絵師  :山田睦月
デザイン:?
編集  :?

最初にお断り。BL小説じゃないですよ?

人と幻想世界の住人《神話的人類》達が同居する世界で、その《神話的人類》絡みの事件捜査を専門とする部署に配置されたジョエル。
人と《神話的人類》の接し方に日々戸惑うジョエルと、コンビを組んでいるヴァンピール(吸血鬼)の青年・カートの日常&捜査活動を中心に、人と《神話的人類》の日々の暮らしぶりを生き生きと描いています。実に細かい部分まで行き届いた設定が魅力のファンタジーというにはリアルな息づかいのある物語。おすすめ。
2巻では法廷劇まで見られますよ!

この作品の大きな特徴は、人と人以外の存在が共に暮らしていく上で障害となるだろう様々な事柄について、きちんと考察され描写しているところです。
いろんな法律が施行されていて、例えば吸血鬼が外を出歩くには自らが吸血鬼である証明書を常に携帯して持ち歩かないといけないとか、勝手に血を吸うと即逮捕とか、登録すると役所から血液の配給を受けることが出来るとか、現実に幻想世界の住人と暮らすなら絶対に問題になるだろう事柄についてこと細かにフォローしてます。
他でも万事がこういう感じなので、読んでいる物語世界が実際に存在するような気になってくるんですよね。
だからこそ、2巻では神話的人類が起こした事件?についての法廷劇なんてものまで読むことが出来るのです。これがまた実に緊迫感があっておもしろい!

また、主人公のジョエルは神話的人類と、あまり構えずに接することのできる差別意識のない得がたい人間ではありますが、では博愛主義のパーフェクト人間かというと全然そんなことはなくて、しょっちゅう行き詰まり、人と神話的人類の間に立ちはだかる大きな壁の前に挫折しては、よろよろしながら這い上がって再び前に歩き出す、でも時々はあっさり後ろ向いて逃げ出したりするのです。
そんな作品ですが、3巻完結らしく2巻ではとんでもないところで切ってくれました。レイニー止めか! 続き、続きを!


この作品の名台詞

「Vになるってどういう事か解る? いつだって他人の首を見つめないように努力してなきゃならないってことだよ」
「どんなに我慢しても月に一、二度は血を飲まなきゃいられない。飲んでる時は幸せだけど、しばらくしたらすぐまた渇きが来るのが判ってる。日光浴にも行けないし、百合の花を摘むことも出来ない。通りを歩くときはいつも日の当たらない側を捜してる。ときどき電球の光で眼が痛くなる。葱やニンニクの入った料理は全部避けなきゃならないし、銀の指輪も出来ない。それに、天国にだって行けないんだ」
「そんなの、君には似合わないよ」
「君は、そこに居てよ。日の当たる明るい場所に居てよ。僕には手の届かない場所にさ」

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from 今日もだらだら、読書日記。 on 金曜, 2007/06/08 - 17:47

モンスターズ・イン・パラダイス 2 縞田 理理著 新書館(2007.5) ようやくパートナーらしくなってきたカートとジョエル。ところが、ある日二人も良く通っていた“神話的人類”が多く...