名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

15×24 link4 Riders of the Mark City

タイトル:15×24 link4 Riders of the Mark City(小説:スーパーダッシュ文庫)
作者  :しんじょうかずま:新城カズマ
絵師  :箸井地図
デザイン:?
編集  :?

徳永準の自殺を止めるために集まった15人の少年少女の視点から送る、大晦日の1日の群像劇。
全6巻予定なので、折り返し点を過ぎたわけですが謎が謎を呼び、味方と思っていた人間は実は裏切り者、事態をもっとも把握していると信じる人間が実はだれも正しく全容を把握していない、15人+αの膨大な人間の思惑が複雑に絡み合って、誰が何のためにどう動いているのか?
これは非常におもしろいです。
まだ完結してないうちから言うのは時期尚早ですが、2009年のライトノベルマイベスト1かもしれません。

高校生の少年・徳永準がネット心中をしようとしたが、自殺報告のため準備していたメールを、自殺前に送信してしまう。準の自殺を止めるために彼と直接関わりのある人間、そしてその周りの人間を巻き込み必死で淳の行方を追ううちに、新たな闇や他人を思惑を吸い込んで事態はどんどん複雑怪奇に錯綜をはじめる様はもう圧巻と言うほかありません。

交通の利便のいい東京を舞台に15人+αがそれぞれの思惑で縦横無尽に動き回り、携帯電話やPCといったツールも駆使して事態の全容を把握、あるいは自分の都合のいいように操作しようとし、利害関係がぶつかりあって誰も正確な現状を理解できないなか、誰がもっとも真実に近づいていくのか?
自殺は止められるのか?

これは、普段ラノベを読まない一般層にもぜひとも読んでほしい話だなあ……。twitterを中心に新たな読者層をじわりと開拓しているようですが、なんか啓蒙記事でも作ろうかしら。あるいは舞台になってる舞台巡礼ツアーでもやってみるとか。

ともかく、あと2巻。最後まで目が離せませんね。


この作品の名台詞

あたしは雨が好きだ。そしておばあちゃんが好きだった。彼女だけが幼いあたしに小さな雨粒を、ほんの小さな言葉を、いつもあたしにふりかけてくれた。いい子だから。いい子だから。いい子だから。
いい子になれ、と彼女は言わなかった。
一度も言わなかった。
ただ、小刻みに幾度もうなずいて、あたしが生まれる前からあたしの中にすでに存在しているはずの、小さな小さな何かにむかって、くりかえしたのだ。
いい子だから。いい子だから、と。
人生は無意味で、無価値で、寝転がっているほうが心地よくて、でも一つだけ真実があるとすれば、それはこういうことだ。――ほんの何気ない一粒で、人はどこまでも走ることができる。

→解説


シリーズ一覧


作品一覧


トラックバック

http://maijar.jp/?q=trackback/4201