名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの

タイトル:迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの(小説:GA文庫)
作者  :はやしりょうすけ:林亮介
絵師  :つゆき:津雪
デザイン:?
編集  :?

ネット上で人気を博したweb小説『和風ウィザードリィ純情派』に大幅に手を入れた、迷宮探索者たちの群像劇2巻です。
大地震によって京都に口を開けた地下迷宮。
迷宮に現れる怪物は、希少価値のある化学物質を含むため、大金を求める探索者たちは今日も迷宮に潜り怪物達と死闘を繰り広げる……

相変わらずおもしろい! 恋愛模様など人物の掘り下げによる一人一人の魅力アップもさることながら、やはりドライなまでに探索者たちの命が『儚い』こと。どんなに周囲から注目され、実力を認められた人間であっても、いともあっさりと人生劇場から退場してしまうその冷徹さによって、読者は最初から最後まで気が抜けないのです。

探索者達を、一般人から明らかに外れた存在として書いてるところがいいですね。確かにこの現代日本でわざわざ命を張って怪物退治など、よほどの覚悟がないとつとまらないのはもちろんですが、どうひいき目に見ても彼らはアウトロー以外の何者でもない。その異質さを時々思い起こさせてくれます。
また、探索者だけでなく裏方に光を当てているのもポイントで、迷宮街で営業するコンビニの店員、怪物の買い取りを行う商社、鍛冶職人といった埋もれがちな人々から見た探索者達を語らせることで、彼らのドラマに厚みを持たせていますね。

個人的には、見えない遠くの恋人よりも近くの友人ということで、笠置町翠と真壁がくっついてくれないもんかなーと思ってます。お似合いだと思うんだけどなあ!


この作品の名台詞

「ああ、もちろんいいですよ。お守りすると口だけで言うのは」
「口だけ?」
「ええ。私たちは実際には何が起きても手を出しません。探索のメリットになる人なら手厚く守りますが、取材では……。地下のすぐそこで亡くなられても遺体を持ち帰ることもしません。遺体を運ぶのも気がめいる作業ですから。口だけならあわせます。でも実際には何もお約束できません。それでもいいならどうぞ」
「……視聴者は知りたがっています」
「知りたい人はこの街にいらっしゃい。あなた方がどうしても見せたかったら危険を冒しなさい。私たちは十分見ていますし、ほかの方に見せるために自分の命を削る必要はありません」

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