名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭

タイトル:アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭(小説:コバルト文庫)
作者  :すがしのぶ:須賀しのぶ
絵師  :駒田絹
デザイン:?
編集  :?

ラノサイ杯でランクインした……というより、twitterで「2008年のラノベベスト1はアンゲルゼ」という書き込みを見かけ、そこまで言われると興味が沸いてきて思わず反応したところ、さらには複数の方にすすめられ一気買いをしました。しばらく積ん読のままだったんですがようやく読み始めた次第です。

……めちゃくちゃおもしろいよこれ!
まだ1巻しか読んでないとはいえ、ちゃんと2008年に読めていたらきっとラノサイ杯に投票したと思います。俺のバカ! もっと早く読んでいれば!

それくらいのおもしろさ。
赤枠おすすめ。

少しだけ未来の日本。東京から千キロ離れた神流島。そこでは、本土と同じように学生達は学校教育を受けながら、軍事教練も受けていた。そんな中、いつもおどおどして他人の顔色をうかがい、目立たないことばかり考え行動する少女・天海陽菜は、抑圧から逃れるためにいつものように森の奥深くで「マリア」と名付けた妖精らしき存在と話し、歌を聴かせてやっていた。ところが、誰もこないはずのその森に、一人の少年がやってきて……。

目立たないように自分を殺しつつも、影では他人を嘲笑したり、”普通”から逸脱したたために、いじめという形で弾き出されたり、周りのもの全てを拒絶したり、恋を自覚した瞬間からものの見え方が全く違ってきたりと、思春期の少女ならではの複雑な感情を高い筆力で描写しています。同時に、なぜ学生にまで及ぶ戦時体制になっているのかの謎が徐々に明らかになっていきます。天使化とは一体なにか? 陽菜にだけマリアが見えるのはなぜなのか?

ストーリー展開も、戦時体制になっていることは伊達じゃない、と言わんばかりに容赦のないものが多いです。何度も打ちのめされながら必死にあがく陽菜から、もう片時も目が離せませんね。

うん、これはもっと早く読むべきでした。大反省。
未読の方も読むべし! 聞いた話では、全5巻の予定が諸事情により全4巻になったそうですが、それでもなお高い完成度を誇っているとのこと。頑張って早いところ読む……までもなく、続きに手を出さずにはいられないですええ。


この作品の名台詞

「泣きながら謝れば、それでなにごともなかったように元通りになるの? かえちゃんやリコの面目も保たれるから、寛大にゆるしてくれるっていうこと?
それってなんか違くないかな。先週、かえちゃんに絶交って言われて、すごいショックだった。もちろん私も悪いところはあったけど、いきなりこんなふうにされるのはちょっとないんじゃないかなって思ったし、ほんと悲しくて死にたくなったよ。

けど、私もこのまんまじゃダメだし、やっぱりいつかは二人とまた仲良くなりたいと思って、それなら私は変わらなきゃダメだと思って、また学校に来たの。ねえかえちゃん、人間て二日やそこらで簡単に変われるもんだと思う?」
「……ヒナちゃん……」
「変われないよね。私、変わりたいと心から思ってるところだけど、まだ、かえちゃんたちが排除した私とほとんど変わってなんかいないよ。今、入り口に立ったばかりなんだよ。だから私、簡単に謝っちゃダメだって思った。かえちゃんたちがイヤだと思ったところがなくなるまでは、きついけど一人で頑張らなきゃいけないって思った」

→解説


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from monumenta librorum on 日曜, 2008/04/13 - 20:22

島で暮らす少女が不思議な存在と出会い、様々な事件に巻き込まれる話。こう書くと、ファンタジーのようにも思えるが、実は、強大な敵に脅かされている世界で、生き残るために中学生...