名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

イキガミステイエス 魂は命を尽くさず、神は生を尽くさず。

タイトル:イキガミステイエス 魂は命を尽くさず、神は生を尽くさず。(小説:富士見ミステリー文庫)
作者  :おきながとおるあき:沖永融明
絵師  :KEI
デザイン:?
編集  :?

これはまたすごい新人作品が。
圧倒的にシリアスに、高い筆力で畳みかけてきます。
白血病でさらに訳ありの妹・一樹と、それを妹に隠している絵本作家の兄・大吾。
両親は既になく、そんな妹を抱えて暮らす大吾のもとにある時、イキガミが現われて彼の生の終わりを告げる……
軽い部分がなく、またラストが賛否ありそうな終わり方ですが、萌え小説に飽き足らない方には絶対のおすすめ。
あ。ちなみに信じられないかも知れませんが絵師は今をときめく人気絵師で、初音ミクでおなじみのKEIさんですよ?

そもそも白血病とかを題材にした時点で話が重たくなるのは不可避ですが、そこに生神というファンタジックな要素、さらに精神疾患まで入り込んでむちゃくちゃ重い話になってます。
さらにさらに境遇が境遇だけに強依存になり、近親愛という要素まで……。ここまできつい要素を何重にも織り込みつつ、破綻なく物語を読ませます。
ラストはちょっと人によっては消化不良になるかも知れませんが、間違いなく強い印象を残す一冊になることでしょう。


この作品の名台詞

「百歩譲ってあたしが生きているのがあんたのおかげだとしてもね、正直な話、生きた死んだが大した問題とも思えないのよね。なんだかどっちもいっしょっていうか、命は奇跡の三乗倍なんて言われてもいまいちピンとこないしね。きっと命それ自体に大した価値なんてないのよ。百円玉一枚で買えるかも」
「だったらなんだっておまえは生きてるんだ。とっとと自殺するなり兄貴と心中するなりすればいいじゃないかっ」
「あったま悪いわね医者のくせに。物事を一元的にしか捉えられないの? 今のはあたしの見解であって、ダイゴのじゃないでしょ。
あたしはダイゴに生きていて欲しいって願われているから生きているの。そんだけ。でもそれってすごい価値よきっと。あたしの命は百円一つかもしんないけど、生きる目的は石油王でも買えないわよ」

→解説


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