付喪堂骨董店 4―“不思議”取り扱います

投稿者： tonbo 投稿日時：木曜, 2008/07/10 - 22:27

タイトル：付喪堂骨董店 4―“不思議”取り扱います（小説：電撃文庫）
作者　　：おどうあきひこ：御堂彰彦
絵師　　：タケシマサトシ
デザイン：？
編集　　：？

作者直営サイト：なし
絵師直営サイト：scene11
特記事項なし

アンティークと呼ばれる、特殊な力を持った骨董品に関わるミステリアスな物語でもあり、同時にアンティークのの偽物を扱う「付喪堂骨董店」でバイトをする来栖刻也と舞野咲、二人のラブコメストーリーを綴った連作短編です。
見どころはいくつもありますが、まずは刻也と咲、この二人の関係が抜群にすばらしいですっ！！
これを読まずして何を読む！　今ならまだ余裕で追いつけるので未読の方は読むしか！
今までの4巻の総決算という意味も込めて赤枠おすすめとさせていただきます。

舞野咲は、いつも無表情で何を考えているかよくわからない……のですが、世間の無表情系と一線を画するのはここからで、咲の場合、思っていることが顔に出ないと言うだけで実はかなりいろいろなことを考える方で、空回りもけっこうしてます。しかし、周りにはそれが見えないものだからそのギャップが実に微笑ましいというかなんというか。
黒ずくめの服装にもこだわりがあったり、日常のいろいろなことに対するこだわりがどこかずれていたり、刻也のことになると（やっぱり表情には全然出ないけれど）とたんに態度が変わるのがおもしろい。

対して刻也は、人の死に関する未来だけは予知することが出来る能力を持ち、その未来は変えることが出来る。それがきっかけでアンティーク絡みの事件に巻き込まれることも多く、危なっかしい限り。やっぱり朴念仁だったり素直じゃなかったりしますが、咲のことは相当深い部分で好きな模様。その割には未だ二人ともお互いを恋人とは認めてないあたり、まだまだ覚悟が足りないといったところでしょうか。
各巻の最終話は大抵、こんな二人がよけいなことを考えすぎ、すれ違いまくって右往左往する話が見れるのが大きいです。特に普段は何を考えているかわからない咲の心情を、最後の短編だけオープンにするというやり方は巧妙と言う他ないですね。

また、本編のアンティークに関わる話も、めでたしめでたしで終わる大団円な結末はむしろ少なく、ブラックな、あるいはほろ苦い終わりを迎えることが多いのもこの物語に深見を与えてます。
まともあれ、すべてをひっくるめておもしろいです。ぜひ一度ご堪能ください。

この作品の名台詞

刻也はずるい。
わたしの心の中を覗こうとしていたなんて。
見られてしまったのだろうか。
聞かれてしまったのだろうか。
あのとき。
刻也が見てしまったあのとき。
わたしがなぜこの『アンティーク』を使おうとしていたかを。
そしてこの『赤糸』で何をしようとしていたかを。
もしもそうだとしたら。
もしもそれが知られてしまっていたとしたら。
もうしばらく顔も見たくない。
だって。
だってそんなの。

……恥ずかしい。

→解説

「それに負ければ失うものがある。命を懸けて取り戻せるなら、いくらでも懸けてやる」
「誰にもあいつは渡さない」

→解説