名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

シフト 1―世界はクリアを待っている

タイトル:シフト 1―世界はクリアを待っている(小説:電撃文庫)
作者  :うえおひさみつ:うえお久光
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

一部の若者の間でだけ起こる現象。寝ている間に意識が「シフト」してRPGのような異世界に渡り、そこで別の暮らしを送ることができる。
そしてその世界に「シフト」するたびに囁かれる言葉。
「世界はクリアを待っている」とはどういう意味なのか?
RPG的な世界観ですが、いろいろとハッとさせられる仕掛けや描写が続出。
そして何よりも、主人公が怪物系というところに大きな意味がある、非常に読み応えのある物語です。
アクションではなく、むしろ人間?模様こそがみどころと言えるかも。

身体にカードスロットのようなものがあって、スキルを入れ替える事が出来たりといった仕掛けはRPGそのもの。
そしてシフトした先でも、現実世界の記憶は保たれるためにそこでの知識は無駄にならない……
基本的にはシフトした先での出来事の描写が中心ですが、現実世界での話もかなり重要度の高いものになっていて、単なるゲーム小説という名で括れない何かがあります。

異世界では力こそ強いものの、その外見などから嫌悪される怪物系を主人公にした事によって話に幅が出来ています。
まだ1巻を読んだだけとは言え、単に「クエストを繰り返してレベルを上げ魔王を倒す」という単純な物語ではありません。
また主人公を巡る恋模様もかなり一筋縄では行かず……正直びびった!! すげえよ!

なお、少し前にハードカバーで出ていたものを文庫化したものですが、ハードカバー版にはイラストがない上に電話帳サイズという凶器のような装丁で、持ち歩く事など到底不可能なサイズなので圧倒的に文庫版をおすすめ。ハードカバー版では2巻までしか出ていませんが、文庫ではきっちり完結されるようです。……といっても、わたし自身はハードカバー版の1巻だけ買って棚の肥やしにしてたんでよくわかりませんが(笑)


この作品の名台詞

「なぁに? あたしがお姫さまの話をするのがそんなに変?」
「い、いや、そうじゃなくてさ、……どうしてここで、お姫さまが出てくるのかな、って……」
「だって、『魔王』ときて、『勇者』がいるなら、次は『お姫さま』でしょう? じゃなけりゃ勇者はなんのために戦うの?」
「……魔王を倒して世界を平和に、じゃダメなんか?」
「……ダメ。勇者はお姫さまのために戦うの」
「ダメなんか? その理由は?」
「だって世界のためになんて、絶対に、だれかを泣かしちゃうんだから。魔王を倒すため、なんていうのも目的を見失っている感じだし。――別にそういう考えだって、結果的には偉いんだろうし、そういう人たちはきっと偉いヒトなんだろうけど――英雄? みたいな? ――でも勇者って、文字どおり、勇気のある者、でしょう? だったらさ、世界平和、魔王討伐、女の子を守ること――どれが一番、『勇気』って言葉が似合ってる?」
「強いていうなら、魔王討伐……」
「えー、魔王討伐に必要なのって、『勇気』とかより『強さ』とかじゃない?世界平和だって勇気より似合う言葉がありそうだし。……もちろん、どれにも『勇気』はいるんだろうけれど、あたしはやっぱり、女の子を守ること、これが一番『勇気』って言葉に似合ってると思う。だからやっぱり、『勇者』は『お姫さま』のために戦わなきゃ。強さとか使命とか関係なく、精いっぱいの勇気で、世界のためでも、魔王を倒すためでもなく、女の子を助けるために、ね?」

→解説


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