名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

テスタメントシュピーゲル 1

タイトル:テスタメントシュピーゲル 1(小説:スニーカー文庫)
作者  :うぶかたとう:冲方丁
絵師  :島田フミカネ
デザイン:?
編集  :?

えーともうなんというか圧巻と言う他ないです。
スニーカー文庫の「オイレンシュピーゲル」と富士見ファンタジア文庫の「スプライトシュピーゲル」、これら二つの物語は同じ世界の違う組織に属する特甲児童たちの戦いを描いたSFアクション巨編。

今までリンクはしていたものの、別々に書かれていた壮大な二つの物語が一つになる完結編の第一巻。
独特の圧縮文体(今勝手に命名)で書かれており、見た目からして500ページオーバーの長編ですが、物語の密度から言うとあの某電撃文庫最厚作品をも超えるくらいの勢いです。
作者があとがきで、自らの書く最後のライトノベルと表現したこのシリーズを見逃すな!

……あ、いっこだけ注意。これ両シリーズを読んでないと全く意味が分からないので、まずはそちらからお読み下さいね。

限られたページ数におよそ有り得ないくらいの情報量を詰め込むことを可能にした独特の圧縮文体を用いて、特甲児童たちの戦いがこれでもかと続きます。
単なるキャラ小説ではなく、もうれっきとしたSFであり政治劇でもあります。複雑怪奇に入り組んだ陰謀は、その全容を容易には表さず、ついに真犯人をとらえた!と思うのも束の間、それはただの末端でなんの情報ももたず、証人という証人は次から次へと消され、陰謀の手は前線で戦う特甲児童たちも容赦なく襲います。
解決したと思った事件が、トラウマ級のやりきれない結末に終わることも日常茶飯事、読んでて辛くなることも数知れず。
でも、そんだけシリアス一辺倒の展開だというのに、時に「ものすごく変なセンス」が発揮されて、笑うしかない場面が描写されたりするところが作者の力量というものでしょう。
……それにしてもこれ、ほんとにハッピーな結末は待ってるんでしょうか。いつ鬱エンドに終わってもおかしくないとんでもない綱渡りだよ(汗
でも、ほんとあんだけ心が折れても折れてもそれでもまだ再び立ち上がってくる涼月たちの精神力には驚嘆するほかないですね。

なお、私はこの巻読んで、一気に涼月のファンになりましたが、もともとは鳳(あげは)スキーな人です。1巻ではMSSサイドの描写が少なかったので、きっと2巻ではMSSサイドになって鳳が大活躍するのを信じてます。


この作品の名台詞

「教えてくれ。あたしは何に向かって進めばいい。あたしは突撃手だ。あたしに出来るのは真っ直ぐ前に進むことだけだ」

→解説


作品一覧


トラックバック

http://maijar.jp/?q=trackback/4211